カブトムシ(ヤマトカブト)の説明と成虫や幼虫飼育、産卵方法について

カブトムシのオスの画像

カブトムシ

学名:Japanese rhinoceros beetle

分布・・・本州、四国、九州(北海道の物は、本州から人為的に持込まれた国産移入種)

※沖縄のカブトムシは別亜種で離島産と区別するために「国産カブト」「ヤマトカブト」などと呼ばれる事もあります。

日本の里山に住む最も大きく、最も強い甲虫で、昔から「昆虫の王様」と呼ばれ夏休みの子ども達に大人気の昆虫です。

夏の雑木林に集まる昆虫で「クヌギ」と言えば「カブトムシ」と連想する人も多い程です。

大型のオスの頭部には、カモシカの様な立派な大きな前角(頭角)があり、胸部にも二股に分かれた後角(無角)がある。

但し小型のオスには頭部にV字状の前角と胸部の小さな突起しかありません。

その為、小型個体は、戦闘能力が落ちる代わりに機動力に優れています。

色は、赤褐色~黒褐色の二系統が存在していますが寿命や強さには影響がなく、ただ単に日没後~早朝までの活動時間に外敵の鳥等に見付からない為の最適な色彩パターンです。

大きさ:オス30~88ミリ(お尻から頭部の角先までのサイズ)、メス30~50ミリ。

80ミリを越えるオスは、胴体や脚も太いので、まさに重戦車です。

樹液を吸う成虫

成虫は、餌の樹液を求め雑木林に集まり、クヌギ、コナラ、ミズナラ、カシ、クリ、地域によってはアカメガシワ、イチョウ、ヤナギ、シマトリネコ等にも集まります。

地域によって大きさや活動時期、集まる木が異なるので地域固有の遺伝子が存在している様に思えます。

オスは頭部の大きな角で相手の足元をすくい上げ、テコの原理で持ち上げて投げ飛ばします。 その姿は豪快な物があります。

投げ飛ばすだけの様に見えるカブトムシの喧嘩ですが、実際は相手の角をへし折ったり、頭部の角と胸部の二股の突起の間に相手を挟み込み穴を開けてしまう事もあります。

縄張り争いの為、樹上で「ガリガリ、バリバリ」と凄まじい音を立ててケンカをしている事が多いです。

オスは、後脚を使って器用にオシッコを飛ばしてメスを誘引するフェロモンの様な物も一緒に拡散させています。

※「フェロモン=餌場」という認識でオスも誘引される事が近年、解明されています。

主に6~8月(梅雨明け直前~梅雨明け後)に発生のピークを迎え、成虫の寿命は野外では1~3ヶ月とされています。

自然界では秋が近付くと広葉樹が落葉の準備の為に樹液を止める事が原因で生きて行く事ができません。

ただし、飼育下では昆虫ゼリーを与える事で10月以降も生きる事があります。

※ごく稀に天然個体の越年(年越し)の飼育例があります。

虫吉では、2024年8月5日に採集したカブトムシが2025年3月14日まで生きた事があります。

カブトムシのメスの画像

メスは、日中や産卵時に土の中に潜る性質があるので汚れが落ちやすい様に体中が無数の毛(微毛)で覆われています。

日中の明るい時間帯でも木の根元の葉っぱや土を掘ると出て来る事があります。

メスは、生涯に1匹のオスと1回だけの交尾しか行わない事が近年の研究により明らかになっています。

メスは、交尾の際にオスから精子胞(精子が入った米粒くらいのカプセル)を受け取ると以降は、オスを拒絶して体力が尽きるまで産卵を行うそうです。

※私も子供の頃から毎年カブトムシ採集を行っていますが、クワガタと異なり、産卵痩せして磨耗したメスとオスが交尾をしている姿を見た事がありません。

理由は、まだ解明されていませんが、効率良く産卵して子孫を残す為という事だけは確かな様です。

例えば、カブトムシはクワガタの後の時期(梅雨明け前後もしくは以降)に発生するので樹液が出ている期間が短い事、梅雨や秋雨(台風)の時期にカブトムシが少ない事、頻繁に樹液に集まると子孫を残す前に天敵の鳥獣に捕食されてしまう事、孵化した幼虫が約1ヶ月の超高速期間で終齢まで育つ事から、越冬可能な終齢まで確実に育つ事ができる季節に産卵を済ませるなどの理由で最も効率が良い繁殖能力を獲得しているのかもしれません。

成虫の飼育例

繁殖は、コバエ防止飼育ケース(中サイズまたは大サイズ)に産卵用マットを入れて飼育すると比較的簡単に産卵します。

※産卵をさせたくない場合は、ココナッツマットを用いると良いです。

※1匹だけの飼育の場合は、コバエ防止ケース小サイズでも大丈夫です。

夜行性なので暗くなると活発に動き回る上に喧嘩をして傷付け合うので1つの飼育容器には必ず1ペアのみ(オスは1匹だけ)で飼育してください。

※樹上生の昆虫なので止まり木エサ皿など足場になる障害物と隠れ家のクヌギの落ち葉を入れておくと良いです。


幼虫の詳しい飼育方法について

飼育ケースに幼虫を戻して完了です。

幼虫も飼育容器(中または大)に無添加虫吉幼虫用マットを入れるだけなのでお子様と手軽に楽しむ事が可能です。

幼虫のエサ交換は、1ヶ月に1回の頻度で行う事をお勧めします。


幼虫の雌雄の見分け方

オスの幼虫

↑オスです↑

↑メスです↑

終齢(3齢)まで育つとオスの画像の丸印の箇所に▼型(逆三角形)をした斑点が現れます。

若い終齢は、斑紋が少し分かり辛いですが大きく成長するにつれて明確に目立ち始めます。

なお、メスには、顕著な逆三角形の斑紋が見えません。


飼育ケース(中サイズ)での飼育方法

中ケースの飼育例

中サイズには、無添加虫吉マットが約5から6リットル(1袋半)ほど入ります。

沢山のエサを食べるので1つの容器に沢山の数を入れ過ぎるとフンが増えるのが早まってしまいます。

ストレスや不衛生な環境が原因で病気に掛かってしまいますので少数をお勧めします。

確実に育てる場合は、2から3匹程度をお勧めします。

どうしても沢山入れなければならない場合は、4から5匹くらいが良いと思います。


飼育ケース(大サイズ)での飼育方法

大ケースでの飼育例

大ケースには、無添加虫吉マットが約12から13リットル(3袋前後)ほど入ります。

容器が大きい分だけ沢山の数を入れると小回りが効きにくくなります。

なので雌雄の判別が可能でしたらオスのみ、メスのみを別々の容器に分けていただく事をオススメします。

そうする事で羽化した際、いつの間にか交尾して卵を沢山産み過ぎるというトラブルを回避できます。

密集する習性があるので確実に大きく育てる為に5から8匹程度での飼育をお勧めします。

※メスの場合、一回り小さいので10匹ほど飼育可能です。


ブロー容器1000ccでの観察飼育方法

幼虫をブロー容器1000ccに入れる様子

ブロー容器1000ccに無添加虫吉マットを入れて1匹ずつ飼育する方法です。

(容器のサイズは、直径:約85ミリ、高さ:約180ミリ)

観察目的の場合や飼育頭数が少ない方に特にオススメです。

また、1匹ずつ飼育する事で接触による外傷や糞食を防止できるので羽化率が上がる飼育方法です。

主に春先の終齢幼虫の最終交換で使用する事が多いですが、大切に飼育したい場合は、初齢もしくは二齢から始めても良いです。

1匹のカブトムシが1ヶ月に食べるマットの量は、約1000cc(1リットル)です。

最低限の1リットルのマットが入る容器なので毎月の餌交換を行うと良いです。

※餌交換は、蛹化(蛹室の作成)の時期を迎える4月か6月まで行います。

単独飼育なので羽化率が高く、よく耳にする羽化後に勝手に交尾をして産卵という想定外のトラブルが絶対に起きません。(個体管理が行いやすいです。)
また、容器が軽い分だけ餌交換も意外と楽です。


エサ交換のタイミング

沢山食べるので基本的に1ヶ月に1回のマット交換が必要です。

育ち盛りの晩夏から秋口、終齢が活発になり始める春から初夏は、成長のトラブルや病気を防ぐ為にエサを全部交換する事をお勧めします。

但し、晩秋、冬、初春(概ね11月から翌3月上旬)の寒い季節は、あまり食べないので無添加幼虫マットならではのリーズナブルなエサ交換の裏ワザが存在します。

ふるい掛け

劣化が遅く、ドロ状になりにくいので画像の様に容器の中のマットを園芸用のふるい(約5ミリの網目)に掛けてフンのみを取り除いて使い回す事が可能です。

画像の黒い小豆状の固形物がのフンです。(花壇やプランター、家庭菜園の肥料に最適です。)

気温が低い季節は、全部の土を交換するのが勿体無いのでこの方法だと経済的かつ衛生的に保てるのでオススメです。

冬場に活動が鈍くなった幼虫は、春先の2月頃から急に食欲が増して更に大きく成長します。

大きなオスの幼虫

大きなオスの幼虫は、30グラムを大きく超えます。

特に大きな物は、画像の様に45グラムを大きく超える事もあります。

※メスは25から30グラムになります。

ブロー容器で蛹室を作った幼虫の画像です。

順調に育つと5月の終わり頃から6月に掛けて卵を立てた様な形の空洞を作り、その中で蛹の準備(前蛹)の期間に入ります。

オスの蛹

約7から10日前後の前蛹の後に脱皮してオレンジ色のサナギに変化します。

2週間ほど経過すると頭部、胸部、脚が徐々に黒く色付き始めます。

羽化したばかりのオス

サナギになってから約3週間後で羽化が始まります。

初夏から夏の樹液が出るシーズンに羽化します。

羽化したばかりは、上翅が真っ白で柔らかいですが時間と共に赤もしくは黒褐色に変化します。

10から15日ほど経過すると体が硬くなり、土の中から脱出して飛んで行きます。