ミヤマクワガタの説明と成虫や幼虫飼育、産卵方法について

ミヤマクワガタのオスの画像

ミヤマクワガタ(Lucanus maculifemoratus)

南西諸島と一部の離島を除く北海道~九州の日本全土に棲息する大型のクワガタです。

御蔵島産(ミクラミヤマ)と奄美大島産(アマミミヤマ)は、本土に生息する種類と別亜種。

外来種や離島産の亜種と区別する為に愛好家から「本土産または国産ミヤマ」と呼ばれることが多いです。

オスの頭部には、王冠状(耳状)の突起が有り体に金色の細かい毛が生えている特徴的なクワガタで非常に人気が高い種類です。

大型個体になればなるほど頭部の冠が発達して迫力が出る傾向があります。

「深山(みやま)」という名前のとおり、標高が高い場所の深い山奥に棲息しています。

その為に高温に弱いので飼育には注意が必要です。

※近年は、真夏が猛暑になる事が多いので大切に飼育していただく為、冷房を効かせて22から25度前後での飼育を推奨しています。

大きさは、オス28から78ミリ、メス24から48ミリ。

70ミリを超える大型のオスは、重量感だけでなくアゴや頭部の冠(かんむり)も発達するので非常に人気が高いです。

寒冷地や標高が高い地域、温暖な地域などの育った環境で頭部やアゴの形状が異なる事で人気があるクワガタです。

エゾ型(北海道型)、サト型(富士型)、ヤマ型(基本型)の3つの名称が有るが、どの地域でも全ての型が発見されており、気温や育った環境によって形が変わるだけで亜種や遺伝では無いという報告も有ります。

※北海道の個体を自家繁殖させたら、全て別の型になったという報告例もあります。

ミヤマクワガタのメスの表側

メスの真上からの画像です。

上翅に光沢がありますが頭頂部が平でザラザラとした感じです

また、産卵時に土を掘りやすい様に太いアゴを持つのも特徴です。

ミヤマクワガタのメスの裏側

裏返すと大腿(脚の付け根)にオレンジの斑紋があるので比較的識別が簡単です。

ミヤマクワガタのメスの解説>>

天然のミヤマクワガタのオス

自然界では、「林床」と呼ばれる森林内部の落ち葉が堆積した部分の地表面の温度が25℃を超えると生息できなくなると言われています。

地球温暖化に伴い小型化したり、他のクワガタがミヤマクワガタの生息域へ流入して数が減ってしまう恐れが有る為、環境指標の観点で注目される種類です。

背中に生えた金色の毛は湿度を帯びると黒もしくは茶褐色になり、昼間など乾燥すると金色になり保護色になります。

よってミヤマクワガタは、熱を吸収しにくいだけでは無く、野生動物や鳥などの外敵に見付かりにくいので明け方や夕方、日中でも日光が当たらない場所なら活動出来ます。

成虫はクヌギ、コナラ、ブナ等の樹液に集まります。

幼虫は、土中に埋まって腐葉土化した朽ち木に生息し成虫までに長い物で2~3年以上掛かる事も有ります。(木の枝が山積した場所近くの砂状の土壌から出てきた事も有ります)

近年は、温暖化の影響で生息域や活動出来る期間(季節)が狭まってしまう事が懸念されている種類です。

カブトムシ同様に夏だけの寿命と思われやすいクワガタですが、実は晩夏~秋に羽化すると、そのまま蛹室内で越冬し翌年の初夏から活動を開始している事から自然界では羽化後1年前後も生きている事になります。

天然個体の寿命は数ヶ月ですが、温度(20℃前後)とエサに注意して飼育すれば、年明けまで生きた実際の飼育例やお客様からのご報告も有ります。

同様に、繁殖(羽化させた)個体も1年以上生きさせる事も可能です。


■飼育について

ミヤマクワガタのペアの飼育例

高温に弱いので推奨飼育温度は、20℃前後です。

飼育下では、外気温ではなく、飼育ケース内及びマットの温度が25℃を大きく超えてしまう環境だと厳しい種類です。

※飼育容器内のマットの温度は、外気温よりも3℃前後(場合によって4℃以上)も高くなる事があります。
夏季は室内の温度を逆算して冷房にて20から22℃の一定で保つ必要があります。

(室温22℃でマットの内部温度が25から26℃という計算になります。)

特に真夏の冷房無しの環境だと暑さで突然死を起こしやすいので注意が必要です。

真夏の冷房管理が必要な種類です。

◆推奨アイテム◆

コバエ防止ケース(中サイズ)プレミアム国産ゼリー成虫用マットココナッツマットエサ皿止まり木クヌギの落ち葉セット樹皮など

足が長く、体が立体的な形状の種類は、樹上性が強いので転倒防止の為に落ち葉や止まり木などの障害物を十分に入れて飼育します。

マットの深さは、ケースのサイズに応じて5から10センチ前後で構いません。

オスの気性が荒くメスを挟んで殺してしまう恐れが有りますので、交配時以外は別々に分ける事をお勧めします。

その際にメスはミニか小サイズ、オスは中サイズがオススメです。

ペアリング(交配)の際は、飼育ケース(小か中サイズ)で2、3日だけオスと同居させて下さい。


■産卵について

ミヤマクワガタの産卵に必要な物

◆推奨アイテム◆

コバエ防止ケース(大サイズ)、プレミアム国産ゼリー、産卵専用マット、園芸用乾燥黒土、エサ皿、止まり木、クヌギの落ち葉セット、樹皮など

※乾燥黒土は、ホームセンターの園芸コーナーなどで販売されています。

暑さに弱いので真夏に常時20から22℃までの温度管理ができない場合は、可哀想な事になってしまいますので飼育や産卵を諦めるしかありません。

ミヤマクワガタの産卵用土の作成画像

軽く霧吹きをして湿らせた園芸用黒土と産卵用マットをを半々の割り合いで混ぜて飼育容器に詰め込むと産卵効率が上がります。

土に産卵する種類なのでマットの深さは、最低でも20センチ前後は必要です。

産卵成功の画像

上手くハマると秋の終わりに数十匹の幼虫が一度に出てくる事があります。

但し、羽化までに2年以上掛かってしまうので計画的な飼育が必要です。

ミヤマクワガタの産卵方法>>


■幼虫飼育について

ミヤマクワガタの幼虫

※現在、画像の乳白色ボトルは終売になっており、遮光クリアボトル800ccに仕様の変更が発生しています。

幼虫飼育は、無添加虫吉マットボトル800ccを3から4ヶ月に1回の頻度で交換するだけで大丈夫です。

ただし常に出来るだけ低温を心掛ける必要があります。

自然界では、腐葉土と山砂が混ざった様な場所で育っている為、菌糸ビンを食べて育つ種類ではありません。

※虫吉では、薄暗い竹林の土の中でミヤマの幼虫が育っているのを確認しています。

幼虫のボトルを風通しが悪い場所(環境)や箱状の密閉空間で保管すると幼虫の落ち着きが極端に悪くなるので注意が必要です。

また、終齢幼虫時に真冬の20度を超える過度な加温環境や真夏にエサ交換を行うと同様に落ち着きが悪くなって上に出て来るトラブルが多くなります。

出来れば春先の4月頃までに交換を済ませて夏の交換を省略するとストレス痩せを防ぎ易いです。

幼虫飼育温度は、基本的に春から秋のみ冷房で20から22℃の温度管理を行い、気温が20度以下の季節(概ね11から4月頃)は、室内の出来るだけ気温が低い場所(無加温)での飼育をお勧めします。

※サーキュレーターや扇風機を用いてお部屋の空気循環を行う事でボトル内への酸素供給を促しやすくなります。

ボトル内への空気循環に関する説明 >>

国産ミヤマクワガタ74.5ミリオーバー

虫吉では、マットボトル800ccのみの飼育(4ヶ月に1回程度の交換)で74ミリオーバーを羽化させた事があります。

大型個体の羽化を紹介したブログ記事>>